炎症後色素沈着とは?正しいセルフケアと治療法の選び方

「ニキビが治ったと思ったら茶色いシミになった…」 「レーザー治療したのに戻りシミができた…」
こんな経験、ありませんか?
これは「炎症後色素沈着(PIH)」と呼ばれる症状です。
実はこの悩み、日本人を含むアジア人に特に多いんです。
今回は炎症後色素沈着について、原因からセルフケア、そして美容皮膚科での治療法まで徹底解説します。
炎症後色素沈着とは?

炎症後色素沈着とは、皮膚に何らかの炎症が起きた後に、その部分に色素(メラニン)が過剰に沈着して皮膚が暗く変色してしまう状態を指します。
炎症が治まった後も、茶色や黒っぽい色の斑点や斑紋として皮膚に残ることが特徴です。
今回はそんな色素沈着について詳しく説明していきます。
主な原因
炎症後色素沈着の主な原因は
- ニキビ:炎症性ニキビを潰したり強くこすった後
- 湿疹やアトピー:掻きむしることによる刺激
- 虫刺され:掻くことによる炎症
- やけど:軽度でも色素沈着を起こす
- 美容医療後:ピーリングやレーザー治療後
- 摩擦による刺激:間違ったスキンケアや強くこすること
炎症によって皮膚のメラノサイト(色素細胞)が活性化され、メラニン生成が促進されることで色素沈着が起こります。
また、炎症によって生じた炎症性サイトカインなどの物質も、メラニン産生を促進する要因となります。
シミとの違い
炎症後色素沈着とシミ(老人性色素斑など)は見た目が似ていることから混同されがちですが、以下のような違いがあります。
特徴 | 炎症後色素沈着 | シミ(老人性色素斑など) |
原因 | 炎症の後に発生 | 主に紫外線による蓄積ダメージ |
発生時期 | 炎症後、比較的短期間で出現 | 長年の紫外線曝露により徐々に形成 |
好発部位 | 炎症が起きた部位ならどこでも | 主に日光に曝される部位(顔、手の甲など) |
色調 | 褐色~黒褐色、赤みを帯びることも | 茶色~黄褐色が多い |
治りやすさ | 時間経過と適切なケアで改善する可能性がある | 自然消退しにくい(専門的治療が必要) |
自然に治るのか
炎症後色素沈着は、日頃の適切なケアと時間経過により自然に治ることがあります。
しかし、完全に消失するまでには数ヶ月から数年かかる場合もあります。
一般的に
- 表皮(皮膚の浅い層)に限局している場合:数ヶ月で改善することが多い
- 真皮(皮膚の深い層)まで及んでいる場合:年単位の時間がかかることも
色素沈着の程度、皮膚の深さ、肌の色調などによって回復期間は異なります。
自然治癒を促進するためには、日焼け止めの使用による紫外線防御が非常に重要です。
紫外線はメラニン生成を促進するため、色素沈着を悪化させたり、治りを遅らせたりします。
基本的にはSPF30以上の日焼け止めを毎日使用することが推奨されます。
どんな人がなりやすい?
炎症後色素沈着はすべての肌タイプで起こり得ますが、特になりやすい傾向として以下などが挙げられます。
- 肌の色が濃い方
- もともとシミができやすい体質
- 日光に頻繁に当たる方
- アトピーやニキビなどの炎症性疾患を持つ方
- 妊娠中や避妊薬服用中などのホルモンバランス変化がある方
日本人を含むアジア人は、メラニンを生成しやすい特性を持っているため炎症後色素沈着が起こりやすい人種です。
関連記事:シミをとるにはどうする?年代別おすすめ対策と治療法
炎症後色素沈着のセルフケア方法

スキンケアの注意点
炎症後色素沈着のケアでは、以下の点に注意することが重要です。
- 優しい洗顔:低刺激の洗顔料でこすらない
- 物理的刺激を避ける:スクラブやピーリング剤は控える
- しっかり保湿:バリア機能を維持
- 刺激成分を避ける:アルコールや香料入り製品は使わない
- 新製品は慎重に:パッチテスト後に使用
色素沈着がある時は、肌のバリア機能が低下していることがあるため、刺激の少ない優しいスキンケアが基本となります。
市販薬と美白成分
薬局やドラッグストアで入手できる成分で、炎症後色素沈着に有効とされるものには以下があります。
- ビタミンC誘導体:メラニン生成抑制と還元効果
- トラネキサム酸:抗炎症とメラニンを抑制
- アルブチン:メラニン生成を抑制
- ナイアシンアミド:メラニン輸送抑制と抗炎症
- αハイドロキシ酸:角質除去効果(少量から開始)
- アゼライン酸:軽度の色素沈着に効果的
これらの成分を含む製品を選ぶ際は、濃度や配合成分に注意し、自分の肌質に合ったものを選ぶことが大切です。
生活習慣でのサポート
日常生活での対策も色素沈着の改善に役立ちます。
まず最も重要なのは徹底した紫外線対策です。
SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを毎日使用し、2〜3時間おきに塗り直しましょう。
帽子や日傘も併用して物理的な紫外線防御も行うことが大切です。
食事面では、ビタミンC、E、ポリフェノールなどの抗酸化作用のある食品を積極的に摂取することをおすすめします。
また肌の再生と修復を促進するため十分な睡眠を心がけ、炎症を悪化させる可能性があるストレスの管理も重要です。
喫煙は酸化ストレスを増加させて色素沈着を悪化させるため、禁煙することも改善につながります。
治るまでの期間と限界の目安
炎症後色素沈着の改善には個人差がありますが、時間がかかります。
表皮の浅い色素沈着なら3〜6ヶ月程度で改善することが多いですが、真皮の深い色素沈着になると1〜2年以上かかることもあります。
また深い炎症が原因の場合は、完全に消えずに痕跡が残ってしまうケースも。
以下の場合は皮膚科受診を検討しましょう。
- 6ヶ月以上セルフケアを続けても改善が見られない
- 色素沈着がどんどん濃くなっていく
- 痛みやかゆみを伴う
- 色調や形状が変化している
美容皮膚科での炎症後色素沈着の治療

自宅でのセルフケアで改善が見られない場合や、より効果的な治療を希望する場合は、美容皮膚科での治療を検討することができます。
医療機関では、症状の程度や色素沈着の深さに応じて、様々な治療法が提案されます。
レーザー治療
レーザー治療は、特定の波長の光を用いて、メラニン色素をターゲットにする治療法です。
- Qスイッチレーザー:メラニン色素を選択的に破壊
- フラクショナルレーザー:微細な穴を開けてターンオーバーを促進
治療回数は通常3~6回程度で、基本的には4週間間隔で行います。
治療直後は一時的に赤みや腫れが出ることがありますが、数日で落ち着くことが多いです。
光治療
光治療はレーザー治療ほど強力ではありませんが、より安全に色素沈着を改善できます。
- LED光線療法:特定の波長で細胞活性化とメラニン抑制
- フォトフェイシャル:色素沈着と肌質改善の両方に効果
光治療は痛みが少なく、ダウンタイムもほとんどないため、日常生活に支障をきたさず治療を続けることができます。
外用薬
医師の処方による外用薬は、市販薬より高濃度で効果的なものが多くあります。
- ハイドロキノン:メラニン生成を強力に阻害(2~4%濃度)
- トレチノイン:細胞のターンオーバーを促進(初期は皮むけあり)
- コウジ酸:メラニン生成を抑制
- ステロイド外用薬:炎症を抑制(短期間使用)
これらの薬剤は医師の指導のもとで使用することが重要で、自己判断での長期使用は避けるべき薬剤です。
内服薬
内服薬も炎症後色素沈着の治療に用いられます。
トラネキサム酸は血管拡張や炎症を抑制することが可能です。
またビタミンCやグルタチオンなどの抗酸化成分は、メラニンの産生を抑える働きが期待できます。
内服薬は全身に作用するため、副作用のリスクについても医師と相談しながら内服することが重要です。
イオン導入
イオン導入は、微弱な電流を利用して美容成分を肌の奥まで浸透させる治療法です。
- ビタミンC誘導体のイオン導入:抗酸化作用とメラニン生成抑制効果
- トラネキサム酸のイオン導入:炎症を抑え、メラニン産生を減少させる
痛みがほとんどなく、即効性は高くありませんが、継続することで徐々に効果が現れます。
ピーリング
ケミカルピーリングは、古い角質を除去し、皮膚のターンオーバーを促進する治療法です。
- グリコール酸ピーリング:軽度〜中度の色素沈着に効果的
- サリチル酸ピーリング:脂性肌や毛穴詰まりに適している
- TCAピーリング:深い層の色素沈着に対応
ピーリング後は特に紫外線対策が重要で、肌が敏感になっているため刺激の強いスキンケア製品は避ける必要があります。
治療費と通院の目安
美容皮膚科での炎症後色素沈着の治療は、保険適用外となることが多く、自己負担となります。
治療法 | 1回あたりの費用目安 | 推奨治療回数 | 通院間隔 |
レーザー治療 | 1万5千円~5万円 | 3~6回 | 4~6週間に1回 |
光治療 | 1万円~3万円 | 5~10回 | 2~4週間に1回 |
イオン導入 | 5千円~1万5千円 | 6~12回 | 1~2週間に1回 |
ピーリング | 1万円~3万円 | 4~8回 | 2~4週間に1回 |
処方薬 | 3千円~1万円 | 症状に応じて定期的に受診 | 1~3ヶ月に1回 |
治療効果は個人差が大きく、完全に消えるまでに6ヶ月〜1年以上かかることもあります。
また、治療中も日常的な紫外線対策や適切なスキンケアの継続が必要です。
治療を始める前に、医師と十分に相談し、複数の治療法のメリット・デメリットや費用について説明を受けることをお勧めします。
多くの場合、単一の治療法ではなく、複数の方法を組み合わせることでより効果的な結果が得られます。
炎症後色素沈着を予防する方法

紫外線対策を徹底する
紫外線はメラニン生成を促進するため、色素沈着の最大の悪化要因です。
日焼け止めは季節を問わず毎日使用し、SPF30以上、PA+++以上の製品を選びましょう。
2〜3時間おき、または汗をかいた後はこまめに塗り直すことが大切です。
日焼け止めだけでなく、帽子や日傘、UVカット機能のある衣服も併用して物理的な紫外線予防も行いましょう。
室内にいても油断は禁物です。
窓ガラスを通してもUVAは入ってくるため、室内でも対策が必要になります。
また紫外線の強い10時〜14時の時間帯は、できるだけ外出を控えめにすることをおすすめします。
日焼け止めは化学的(ケミカル)タイプと物理的(ミネラル)タイプがありますが、敏感肌の方は刺激の少ない物理的タイプ(酸化亜鉛や酸化チタン配合)がおすすめです。
刺激や摩擦を避けるスキンケア
肌への物理的・化学的刺激は炎症を引き起こし、色素沈着のリスクを高めます。
- ぬるま湯で泡洗顔する
- 拭き取り化粧水は控える
- スクラブ製品は使わない
- ファンデーションの重ね塗りを避ける
- 刺激を感じる製品は使用しない
- タオルドライは押さえるように優しく
敏感肌の方で新しい化粧品を試す際は、必ず腕の内側などでパッチテストを行い、48時間経過しても問題がないことを確認してから顔に使用するようにしましょう。
肌荒れ・ニキビを悪化させない
炎症を起こしている肌トラブルを早期に適切に治療することも、色素沈着の予防につながります。
まず何よりも大切なのは、ニキビを絶対に潰さないことです。
潰すと炎症が悪化し、色素沈着のリスクが高まってしまいます。
痒みがある場合も掻かないよう注意が必要です。
日頃のケアでは適切な保湿を心がけ、肌のバリア機能を維持しましょう。
生活習慣では、バランスの良い食事やストレス管理、十分な睡眠が肌の健康維持に重要です。
症状が重い場合は、自己判断での対処を避けて早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
炎症後色素沈着に関するよくある質問

炎症後色素沈着について患者さんからよく受ける質問とその回答をまとめました。
市販薬でも治せる?
結論から言うと、軽度から中等度の炎症後色素沈着であれば、市販薬でも一定の効果が期待できます。
効果が期待できる市販成分には、以下のようなものがあります。
- ビタミンC誘導体
- トラネキサム酸
- アルブチン
- ナイアシンアミド
ただし市販薬には限界もあります。
医療用に比べて有効成分の濃度が低いため、効果の出方は緩やかです。
継続使用が重要ですが、3~6ヶ月使用しても効果が見られない場合は皮膚科を受診することをおすすめします。
市販薬を選ぶ際は、「医薬部外品」や「薬用」と表示されている信頼性の高い製品を選ぶことが大切です。
効果を早く実感したい場合や、色素沈着が強い場合は、初めから皮膚科や美容皮膚科での治療を検討するのも良い選択でしょう。
どのくらいで治るの?
炎症後色素沈着の回復期間は、以下の要因によって大きく異なります。
色素沈着の深さ:
- 表皮のみの浅い色素沈着:3~6ヶ月程度
- 真皮まで及ぶ深い色素沈着:6ヶ月~2年以上
回復期間に影響する要因はいくつかあります。
まず元の肌の色が濃いほど治るまでに時間がかかる傾向があり、年齢を重ねるにつれても回復が遅くなります。
また日常的に紫外線を浴びる環境にいると治りが遅れがちです。
適切な治療方法を選択できているかや、その人が持つ体質なども大きく関わってきます。
大切なのは、焦らずに適切なケアを継続することです。
改善は通常、徐々に起こるものなので、写真を定期的に撮影して比較すると変化が分かりやすくなります。
再発することはある?
炎症後色素沈着は改善しても再発することがあります。
主な原因は同じ場所にニキビが繰り返しできることや、紫外線対策が不十分なことです。
一度色素沈着ができた部分は紫外線の影響を受けやすく、日焼け止めを怠ると再び濃くなってしまいます。
また、洗顔時に強くこすったり、ホルモンバランスの変化も再発要因となります。
再発を防ぐには、特に紫外線対策の徹底と優しいスキンケアが重要です。
関連記事:ニキビを潰した後に起こるリスクは?正しい対処法やケア方法を紹介
千葉内科在宅・美容皮膚科クリニックでできる対応
当クリニックでは、IPL光治療と内服薬での治療を行うことができます。
IPL光治療を行う場合は、ひとりひとり肌診断器VISIA®(ビジア)を行ってから施術をします。
1回コース(税込) | 5回コース(税込) 10%OFF | |
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まとめ
炎症後色素沈着は一時的な肌トラブルで、適切なケアで必ず改善します。
セルフケアのポイントは「刺激を与えない優しいスキンケア」「美白成分の継続使用」「徹底した紫外線対策」の3つです。
効果が見られなければ美容皮膚科でのレーザーや光治療も検討してみましょう。
何より大切なのは焦らず地道にケアを続けることです。
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